現在、病院にて管理栄養士をしているそらです!
初回や2回目以降の栄養指導のやり方が分からない
病院での栄養指導の手順を知りたい
栄養指導での話しの流れを知りたい
という方に、今回は初回と2回目以降の栄養指導の話し方や、話し始めや会話の流れをベテランの管理栄養士の方に伺ったので、例文で解説していきたいと思います。
指導歴26年、栄養指導件数1万件以上の経験を持つベテラン管理栄養士。栄養指導では相手の心に寄り添った指導を行い、患者さんがほろりと泣くほど感動させたことも。
私の職場も引継ぎはありましたが管理栄養士は一人だったので、初めての栄養指導はもちろん一人、教科書では習っていても、いざ実践となると右も左も何から話せばいいのか分からず物凄く困った記憶があります・・・
そんな経験から、今回は初めての栄養指導をする、栄養指導のやり方が分からないという管理栄養士さんへ手順や話し方を一から詳しく解説しています。
ではいってみましょう。
結論から言うと
病院の栄養指導手順としては
1. 初めにあいさつ
2. 食生活調査
3. 食事の説明
4. 質問が無いか
5. 目標設定
2回目以降
食事内容の確認
前回指導しきれなかった部分の指導
となります。
まずは初回の栄養指導から、
0. 指導前にカルテなどから情報収集
栄養指導の前に、どんな患者さんなのかをカルテから情報を得ておきます。
精神科だと特に性格やどういう経緯で受診しているのかを知るのは大事になります。
1. 初めにあいさつ
「管理栄養士の〇〇です。よろしくお願いします。」
初対面なので患者さんに心地良さ安心感を与える様にゆっくり優しい口調で言います。
「今回こちらの病院を選ばれたのは何でですか」
「先生は検査結果を見てなんと言っていましたか」
病院を選んだ理由(家族が受診しているから、知り合いからの紹介で、家から近かったので、などいろいろな理由が出てきます!)と、
栄養指導に至った経緯を聞いて患者さんはどんな思い(嫌々来た、頑張りたい、将来が不安など)をしているか探ります。
思いを知っておくと後々の栄養指導や目標を立てる際の参考になります。
2. 食生活調査
※栄養指導の用紙や聞く内容は病院ごとで異なると思いますので参考までに
「では、今から○○さんの食生活についてお伺いしたいと思います。」
一日の生活スタイルについて食事内容、行動を具体的に聞いていきます。
起床時間は何時ですか
朝ごはんの時間は何時ですか
今日の朝は何を食べましたか
お昼ご飯の時間はいつも何時ごろですか
昨日の(もしくは今日の)お昼は何を食べましたか
夕飯の時間はいつも何時ごろですか
昨日の夕食の時間はと内容(メニュー、食べた分量など細かく)
朝食後はお仕事ですか/どういったことをしていますか
お仕事はどういったことをされていますか/お仕事では身体は動かしますか
今はどなたかと一緒に暮らしていますか?(家族構成)
お食事は誰が作りますか
間食で何か食べましたか/お菓子などは食べましたか
飲み物は普段何を飲まれますか?
アルコールは飲みますか、週に何回、一回の量はどれくらいですか
タバコは吸われますか
仕事が終わる時間は
夜寝てから朝までに目が覚めることはありますか(目が覚めて間食してしまうというケースもたまにあるので聞きます)
一日の生活スタイルを聞き取る中で、否定せずに聞くことや傾聴などで患者さんと打ち解ける雰囲気を作れるようにします。
このとき、聞き取りした食事の内容から、ざっと大まかにカロリーと必要であれば他栄養(高血圧なら塩分、脂質異常症なら脂質など疾患によりけり)の計算をします。
相手があまり話さない患者さんだと、上手く聞き出して聞いてあげなければ、食事摂取量を正しく出すことができなかったり、病気の原因が正しく見つけられなかったり・・・
実際の例でいくと、肥満なのに3食の内容を聞き取りした限りではカロリーは少ない・・・
よくよく聞いてみると、夜中に起きで食べてしまうということでした。
食事内容についてはしっかりと聞き取りしましょう!
3. 食事の説明
「医師の指示は糖尿病食で1600kcalになっています。1600kcalだと結構食べることができますよ」
→「結構食べることができる」と言うと安心してくれる患者さんが多いです。
医師からの指示カロリーや脂質、塩分量などについて説明します。(今回は1600kcalとします)
「バランスのいい食事ってどんなお食事か分かりますか?」
この時、どんな回答でも褒めるようにします。
「ご飯の仲間と、野菜、たんぱく質の3つを入れるのが大事になります。」
「食べてはいけない物は何もありません。食べる量が大事になります。」
→「食べてはいけない物は何もありません」と伝えるとホッとした表情になったり、そうなんですか!と安心してくれる患者さんが多いです。
「○○さんが実際に食べているお食事を並べてみますね。」
患者さんの一日の摂取する食事内容の説明をしていきます。
食品サンプルで目安の食事を見せ、次に患者さんが食べている食事を作ってみて、目安の食事との違いを見せます。
「ご飯は130gで良いですが、230g食べていますね。」
「これだと炭水化物が多くなってしまいますね。」など
説明しながら、患者さんが何が多いのか何が足りないのかを、目で見て納得できるようにします。
食品サンプルはこういうものを使用してます
が、良いお値段するので、無い場合はこのようなカードでも。
お金がかけれない場合は、少し厚紙に印刷して切るなど、頑張って手作りできなくもないです。
4. 質問が無いか
「今までの内容で分からないことはありますか?」
わからない事等質問があるか聞きます。質問の回答が分からない場合は、
「次回の栄養指導までに調べておきますね」と伝えます。
5. 目標設定(長期・短期)
本来なら長期・中期・短期で決めることがすすめられていますが、
きっちり目標を定められる方もいれば、正直決められない方もいます。
なので、長期と短期だけは決めるようにしています。
次回までに何が出来るのか、本人に目標を立ててもらいます。
「今までお伝えした中でできそうなことはありましたか」
医者の指示があるときはそれに従い目標を立てるように促します。
「医者からは2㎏減らしましょうと言われているので、そのためにできそうなことはありますか」
炭水化物を減らして1㎏やせる、野菜を毎食 今より多く食べる、など具体的に言ってもらいます。
自分から目標設定ができない患者さんの場合は、
「〇が少なかったので次回までに増やしていきましょう」
とこちらから、目標を伝えます。
全て完璧ではなく1つでも実行出来る事を具体的に言ってもらい次回の栄養指導へと繋げます。
目標が決まったら初回は終了です。
「では、お大事にしてください」と最後に挨拶を。
ノリがいい人には「次回楽しみにしてます」などと声をかけることもあります。
2回目以降の栄養指導の流れ
2回目以降は、
- 数値や目標ができているかの確認、
- 食事内容の確認、
- 前回指導しきれなかった部分の指導(糖尿病食品交換表の説明は長くなるので2回に分けてしています)
がメインとなります。
まずは、
「初回栄養指導の体重・血液検査結果はどうでしたか?結果について医者は何と言っていましたか?」と聞いて
→良くなっていたらほめてどの様な事をしたが聞きます。
良くなっていた時の実際の例
長期目標:体重5㎏へらす
短期目標:野菜を1品追加する、ご飯を茶碗1杯にする
患者「炭水化物を多くとっている事がわかったので栄養指導で言われた量に減らし、毎食野菜を取り入れ、バランス食を心がけたら体重が1㎏減って、無理した感じがなく減量できて良かったです。」
管理栄養士「それはすばらしいですね、食事内容についておうかがいしてもよろしいですか」褒める
~食事の聞き取り~
管理栄養士「食事も前回よりとてもよくなっています。お食事を変えれる方って中々いないですよ、○○さんは凄いですね。」とにかく褒める
(あれば、前回やり残した食事内容の説明)
管理栄養士「目標ですが、前回の目標は継続してできそうですか?」
患者「はい、できそうです」
管理栄養士「では、継続して頑張りましょう、何か質問はありますか?」
最後に今後どうしていきたいか 何か質問があるか聞きます。
悪くなっていた時の実際の例
管理栄養士「ちょっと数値が悪くなっていますね、悪くなった理由で思い当たることはありますか?」
患者「一人暮らしで、 家で作るのが面倒くさいので3食コンビニで買っているのを食べていて、コンビニ食って高カロリーで塩分も多めでコントロールも難しいし自炊しないといけないと思っているんですよ」
管理栄養士「コンビニ食だとコントロールが難しいと思っているんですね。3食コンビニ生活でもいいんじゃないですか?
今のコンビニは色々と健康の事を考えてくれていてカロリー 塩分等表示されてわかりやすいですよね。3食コンビニで食生活をコントロールできる人もいれば 3食自炊でコントロールできない人もいます。コンビニ食はいけないと思わなくても大丈夫、うまく利用していけば健康的になれますよ。」
患者「コンビニ生活でもいいんだ。気持ちが楽になりました。バランスを考えて買ってみます。」
管理栄養士「バランスを考えて買ったら良い結果が出ますね」
患者さんの食生活を無理に変えるのではなく、今の生活の中で出来る事を提案し、具体的にやれる事を一緒に考えると行動変容を受け入れてもらいやすいと感じます。
食の栄養だけでなく、心をなごませ心に栄養を与えて精神的にらくにさせてあげられるよう心がけています。
良い所を見つけてほめてやる気を起こさせて、次回の目標達成の為に何をすべきかを言ってもらい、栄養指導の継続へとつなげられるようにします。
栄養指導で使用する聞き取り用の用紙
栄養指導の用紙ですが、電子カルテの場合は項目が決められているかと思いますが、紙の場合は病院によってバラバラなので自分が書きやすいように作成しています。
とはいえ、どういう形態がいいか分からないという方に、公表されている栄養指導用のテンプレートをまとめています。
・長野県栄養士会(PDF)
・大分県公式HP (栄養アセスメントPDF4P目)
・問診表(栄養指導用) – JA広島総合病院(PDF)
まとめ:病院栄養指導の指導手順や話し方について
病院の栄養指導手順としては
初回に
1. 初めにあいさつ
「管理栄養士の〇〇です。よろしくお願いします。」
「今回こちらの病院を選ばれたのは何でですか」
「先生は検査結果を見てなんと言っていましたか」
2. 食生活調査
「では、今から○○さんの食生活についてお伺いしたいと思います。」細かく聞いていきます。
3. 食事の説明
「医師の指示は○○食で○○kcalになっています。○○kcalだと結構食べることができますよ。」
「バランスのいい食事ってどんなお食事か分かりますか?」→どんな回答でも褒める
「ご飯の仲間と、野菜、たんぱく質の3つを入れるのが大事になります。」
「食べてはいけない物は何もありません。食べる量が大事になります。」
食品サンプルで目安の食事を見る。
「○○さんが実際に食べているお食事を並べてみますね。」
次に患者さんが食べている食事を作ってみて、目安の食事との違いを見せます。
「ご飯は130gで良いですが、230g食べていますね。」「これだと炭水化物が多くなってしまいますね。」など
4. 質問が無いか
「今までの内容で分からないことはありますか?」
質問の回答が分からない場合は、「次回の栄養指導までに調べておきますね」
5. 目標設定
次回までに何が出来るのか、本人に目標を立ててもらう。
「今までお伝えした中でできそうなことはありましたか」
「医者からは2㎏減らしましょうと言われているので、そのためにできそうなことはありますか」
炭水化物を減らして1㎏やせる野菜を毎食 今より多く食べる、など具体的に!
「では、お大事にしてください」
2回目以降は、
「初回栄養指導の体重・血液検査結果はどうでしたか?結果について医者は何と言っていましたか?」
数値や目標ができているかの確認
食事内容の確認
前回指導しきれなかった部分の指導(糖尿病食品交換表の説明は長くなるので2回に分けてしています)
という流れになります。
具体的な例をあげながら詳しく解説しましたが、今回ご紹介したのはあくまで一例です。
なので、ぜひ自分のやりやすい栄養指導へブラッシュアップしていってください!
色々と書いてきましたが、私もまだまだ勉強が必要だと感じています。一緒に頑張っていきましょう!
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